ストレッチとは、体の筋肉や関節をゆっくり伸ばすことで、体を動きやすくし、ケガを防ぎ、疲れを取るためのシンプルな方法です。特別な道具がなくても、日常生活の中で気軽に取り入れられます。運動が得意でない人や、体が硬いと感じている人でも、続けることで少しずつ体に変化が出てくるのがストレッチの良いところです。

まずストレッチの大きな目的は「筋肉の柔軟性を高めること」です。筋肉が硬くなると、血の巡りが悪くなり、だるさやコリ、痛みにつながります。ストレッチをすると、筋肉にゆっくり刺激が入り、緊張がほどけ、温かくなるような感覚が生まれます。これによって血流が良くなり、疲労が抜けやすくなります。

ストレッチが特に効果を発揮する場面はいくつかあります。

① 朝起きたとき
体は寝ている間に固まりやすく、起きた直後は動きにくい状態です。軽いストレッチをすることで、一日のスタートをスムーズにできます。

② 長時間同じ姿勢が続いたとき
デスクワークやスマホ操作で同じ姿勢を続けると、首や肩、腰の筋肉に大きな負担がかかります。1〜2分で良いので「軽く伸ばす習慣」を入れるだけで、仕事終わりの疲れが大きく変わります。

③ 運動の前後
運動前は、軽く動かしながら行うストレッチが安心です。無理に強く伸ばすと逆にケガにつながるので、ほどよく体を温める気持ちで。
運動後は、深い呼吸をしながらじっくり伸ばすことで、疲労が残りにくくなります。

治療の現場で行うストレッチには、いくつか特徴があります。

ひとつは「自分では伸ばしにくいところを、プロの手で補助しながら伸ばす」という点です。例えば、股関節まわりや肩甲骨の奥などは、自分だけではうまく伸ばせない場所があります。そういった部分を、患者さんの呼吸に合わせながら無理なく伸ばすことで、安全に柔軟性を引き出すことができます。

もうひとつは「痛みを和らげる目的で行うストレッチ」です。筋肉は痛みがあると防御反応で固まってしまいます。治療で行うストレッチは、そういった緊張をゆっくりほどくことで、関節の動きを広げたり、痛みの原因をやわらげたりする働きがあります。特に腰痛・肩こり・股関節の硬さによる不調などによく使われます。

ストレッチは毎日続けることで、より効果が高まります。長時間やる必要はなく、1回30秒ほどゆっくり伸ばすだけで十分です。大切なのは「気持ちいい範囲で止めること」。強く伸ばしすぎると逆効果なので、呼吸が止まらない程度の軽い刺激で行いましょう。

体が硬い人ほど、ストレッチの効果は実感しやすいものです。「少し伸びて気持ちいい」を積み重ねていくことで、疲れにくく、動きやすい体に変わっていきます。毎日の生活の中に、ぜひ取り入れてみてください。